年末の棚卸し
12月31日に何を数えるか。消耗品も対象です

2026年10月2日

粗利と手残りの記事で「在庫の増減は年末の棚卸で直します」と書きました。その中身です。 経費になるのは「買った額」ではなく「売れた分の原価」なので、12月31日に残っている在庫を数える必要があります。 見落としやすいのは、商品以外も対象になるところです。

私は税理士ではありません。ここに書いたのは国税庁の「青色申告の決算の手引き(一般用)」を読んで整理したものです。 判断に迷うところは税務署か税理士に確かめてください(頼むか自分でやるかの線引き)。

なぜ数えるのか

国税庁の手引きは、こう始まります。

本年分の必要経費となる商品などの売上原価や消耗品費は、本年中の商品などの仕入高や消耗品などの購入高そのままではなく、次の算式で計算した金額となります。

売上原価=年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高 − 年末(期末)の棚卸高
消耗品費=年初(期首)の棚卸高+年間の購入高 − 年末(期末)の棚卸高

つまり、12月に大量に仕入れても、売れていなければ経費は増えません。仕入れた分は在庫として残り、来年の原価になります。 「年末に仕入れて節税」が効かないのは、この式のせいです。

逆に言うと、在庫を数えないと、今年の経費がいくらなのかが確定しません。棚卸しは申告の前提になる作業です。

何を数えるか

手引きが挙げているのは2種類です。

区分中身
商品など 商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、副産物、仕損じ品、作業くずなど
消耗品など まだ使用していない包装材料、ガソリン、事務用品などの消耗品や、 使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の少額な減価償却資産

下の行が見落とされがちです。レジロール、紙袋、包装紙、テープ、まだ使っていない伝票、タンクに入っているガソリン。 これらも「まだ使っていない分」は年末の在庫です。

ただし、手引きには逃げ道も書かれています。

通常の年に比べて特に増えていない消耗品などについては、棚卸しを省略しても差し支えありません。

毎年だいたい同じだけ在庫があるなら、足し引きの結果はほぼゼロになります。だから省略してよい、という考え方です。 年末に紙袋を箱でまとめ買いした年だけ数える、くらいの扱いで足ります。

「作業くず」が入っているのも覚えておくといいところです。製造や加工をしていると出ます。 著しく少額なものは、下で書くとおり1円以上の備忘価額でよいとされています。

いつ数えるか

12月31日にしなければなりません。

※ 多忙のため年末に棚卸しができないような場合には、年末から多少前後した日に棚卸しをしても差し支えありません。 この場合には、12月31日と棚卸日の間の売上げ、仕入れなどから12月31日現在の棚卸高を計算するとともに、 その計算方法を明らかにしておく必要があります。

原則は大晦日ですが、無理なら前後にずらせます。ただし、ずらした日から12月31日までの出入りで調整し、その計算方法を残しておくことが条件です。

実際には、12月28日あたりに数えて、そのあとの売上と仕入を帳簿から足し引きする形になります。 売上・仕入帳を日付順に付けていれば、その数日分を抜き出すだけで済みます。 この調整計算をメモにして棚卸表と一緒に置いておくのが、手引きの言う「明らかにしておく」です。

どう数えるか

商品や消耗品などの種類、品質、型などの別に、その数量を実地に調べます。

※ 商品出入帳などを設けて毎日の在庫量を明らかにし、毎年一定の時期に実地に棚卸しをして、その正否を確かめている場合は、 商品出入帳などを基にして年末の棚卸高を計算することにより、年末における実地棚卸しを省略することができます。

原則は実地、つまり現物を見て数えることです。帳簿上の数字で済ませるのは原則ではありません。

例外として、在庫の出入りを毎日記録していて、年に一度は現物と突き合わせている場合だけ、帳簿から計算してよいとされています。 「毎日記録している」と「年に一度は現物を確かめている」の両方が条件です。片方だけでは足りません。

もうひとつ、忘れやすい指示があります。

実地棚卸しに際して、棚卸資産の数量などを記載したメモなどの原始記録は、棚卸表と一緒に保存しておきます。

数えながら書いた紙も残します。清書した棚卸表だけ残して、もとのメモを捨てないということです。

単価はどう付けるか

数量が出たら、単価をかけて金額にします。手引きの書き方です。

棚卸資産の評価方法は、あらかじめ税務署へ届け出ている方法(例えば、先入先出法や総平均法、売価還元法、低価法など)によって評価しますが、 評価方法を届け出ていない場合は、次の最終仕入原価法により評価することになります。

年末に一番近い時期に仕入れたその棚卸資産の仕入単価 × 年末の棚卸資産の数量 = 年末の棚卸高

届出を出していなければ、自動的に最終仕入原価法です。多くの個人事業者はこれにあたります。 やることは単純で、その品物を最後に仕入れたときの単価を、残っている数量にかけるだけです。

仕入値が年の途中で上がった品物は、最後の(高い)単価で評価されるので、在庫金額が大きく出ます。 在庫金額が大きいほど売上原価は小さくなり、所得は大きく出ます。仕入値が上がった年は、在庫の持ち方で税金が動くということです。

売上・仕入帳は仕入を日付順に書くようにしてあるので、品名で並べ替えれば「最後に仕入れた単価」はそこから拾えます。 単価の列を書いていない場合は、仕入の請求書か納品書を見ることになります。

売れそうにないもの、くずになったもの

手引きには、下げて評価できる場合も書かれています。

ここは「できます」であって、自動ではありません。区別して、その値段にした理由が分かるようにしておく必要があります。 「売れないと思うから半額」ではなく、処分できる値段の根拠を残す、という話です。

10月のうちにできること

12月31日に慌てないために、いまやっておくと楽になるものを挙げます。

棚卸表の形を先に作る

「品名・規格(型)・数量・単価・金額」の5列で足ります。並び順は、店の棚を回る順番にしておくと数えるのが速くなります。 手引きが言う「種類、品質、型などの別に」を満たすので、同じ商品でもサイズや色が違えば行を分けます。

売れ残りを先に処分するか決める

年末に在庫として持つと、その分は今年の経費になりません。 値下げして売るか、持ち越すかは、12月になってからでは選べません。10月か11月に決める話です。

消耗品のまとめ買いを、年内にするか決める

使い切る分は経費、残る分は在庫です。「通常の年に比べて特に増えていない」範囲なら数えなくてよいので、 いつもと同じ買い方をしているほうが、年末の作業は少なくなります。

この表でやるか、ソフトに移すか

棚卸し自体は、Excelの表で十分にできます。数量と単価をかけて合計するだけです。 ただ、出てきた棚卸高を売上原価に組み込んで申告書まで持っていくところは、 Excelの帳簿と確定申告に書いたとおり、どの控除を狙うかで話が変わります。

10万円控除までなら表のままで足ります。55万・65万控除を狙うなら複式簿記なので、 会計ソフトか税理士に渡す形になります。 在庫を扱う商売は、ここが分かれ目になりやすいところです。

まとめ

出典

2026年10月2日に国税庁の資料で確認した内容です。手引きは毎年更新されます。 2026年分(令和8年分)の手引きが出たら、そちらを確認してください。